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牛死せり片眼は蒲公英に触れて 鈴木牛後

横倒れに牛が死にきった。眼は開いているが生の光は宿らない。「蒲公英」が片目に触れるが、異物と感じることはもうない。 しかし、読者は、「蒲公英」が眼に触れるざわざわと冷たい感覚を想像せずにはいられない。 〈死〉のリアルな厳然さが突きつけられる。

昼の苑

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  昼の苑    岡田一実   盛り上がりる潮は碧(あを)濃し観潮船  渦潮のすごい時過ぎ緩き波  霾やゆふがた海は風熟れて  見る球にして目白の眼目張の眼  蝶々のこゑが耳殻のうしろより  叱られて食ひ止む飯や江戸彼岸  滑り台しまひは春の子を抱き取る  茶色濃くこの初蝶の蛾のごとし  土筆なく絶景かなや土筆摘  階やいかにも春の山の香(かざ)  買ひし土筆を手づからに煮たりけり  雨粒に浸(しと)む辛夷のうす茜  枝交はす此は山櫻姥櫻  立像に鳩のこゑ差す落花かな  深ぶかと雲に隙ある櫻かな  昼日向読経明明山櫻  春風や像の艶ある鼻がしら  その裏の木の美しき植木市  蜂低く蒲公英低く昼の苑  おほしまざくら軸くきとありうすみどり  下萌や猫が斑(まだら)な足を迅(と)く  その影が墓石に差し竹の秋  ものの芽や人間達が滑り台 

宦官に不眠の踊天花粉 田中泥炭『俳句』3月号

 宦官に不眠の踊天花粉 田中泥炭『俳句』3月号 「天花粉」は彼自身が身につけているものだろうか。性を途絶させられた者に「不眠の踊」がある。そこで立ち上る汗の動物的な性の匂いが、「天花粉」の粉っぽい匂いとうち混ざる。勤仕の緊張は休まることなく続き、狂乱の儀式めいた営為へと接合していく。