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雪    岡田一実   濃く吹かれみるみる淡く雪の粉  雪空に白煙いま奔り散り  遮断機や雪降る宙を弧に振り断ち  降る雪や行き交ふ人の関はらず  不思議やな雪の浮木(ふぼく)は昼を更け  忽ちに青き空失せ雪の天  目に覚ゆどの粉となく雪の粉  荒あらと南へ吹雪き日が当たる  天明(あか)く露台に雪の入りくる  雪やみて世騒(せざゐ)つちより立ちのぼる 

篠原梵句集『皿』を読む

  2023.01.15俳筋力の会、「篠原梵句集『皿』を読む」

正月

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 正月    岡田一実    寝にかかる除夜の日越えの華やぎを  初笑そののち呵呵と笑ひ継ぐ  初詣食後その景うす忘れ  撫でなでて撫で殺したり姫始  朝が来て夜が来て朝の繪双六  松のうへ海ひとすぢや結昆布  初夢の酢の香のなかに醒めにけり  横たはる昼の年酒に酔へる身が  除日より晴れて四日のけふも晴れ  かたちなき空気かしこし松の内  ごぎやうはこべらまるで平時の七種粥  松過やむらさきの闇厚積もり

2023.1.7.袋まわしくるくる

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2023.1.7袋まわしくるくる    岡田一実   「身につけるもの」  はつはつとみづを纏へる初湯かな  春著の君の懐に耳押さへつけ  脱ぎそして脱ぎ散らかして姫始  ぼわぼわのパジヤマの上や著る毛布  「伸びるもの」  日が伸びてかたちが影の寒造  皮膚つまみ千枚漬の味をいふ  餅搗や高き低きに顔並び  「魚または海のもの」  蛸を食ふ迦陵頻伽や寒土用  蝦を梳き一度の夢の雪達磨  田作や永遠に寝転ぶ太郎冠者  うをの尾のかしこむ東松の内  徐に来るくれなゐが寒鯉に  「大人」  縮みつつ老をたのしむ蔵開  熱燗や景色だんだん色の失せ  干してすぐ喪服に用や寒の雨  あたま古び太陽古び飾米  楪のあをあをしきも花眼かな  「白いもの」  白浪の潰れしところ寶舟  大根やたばしる意味を昔にし  白妙の富士を左に初音賣  ぽつぺんのひとつはけふの白い闇  「憧れ」  知のなかに独楽をまはして夕べ澄む  俤に遠く師のゐる歌留多かな  飛べるもの日の面をよぎり手鞠歌