櫻    岡田一実  
早打ちの木魚嬉しき櫻かな 
檀家さん寺の櫻を惚れ惚れと 
ほのぼのをあまぎる花や百代(ももよ)橋 
ゆふ冷えをくれなゐくらく花の蕊 
満席と謝されしばしを花の道 
俳人や何々のこと花のこと 
懐ききてかわいい犬や花の風 
根方よりところ離れて落花疎に 
花むしり嗅ぎそこそこで川に捨つ 
花冷や水面を広く鷺の影 
ビール持ち座せば忽ち花の宴 
やどりして山に花降る洗桶 
恋ひめやも葉を吹く風の山櫻 
裏し表し浮きあがる花一片 
閃閃と繁(しば)鳴く鳥や昼櫻 
霾(つちふる)のゆふべや花を並び座し 
鵯のけふ花鳥と申すべう 
夕ざくらアオザイを歩に揺らしつつ 
花白し蹲み向きあふ母むすめ 
櫻まつりの出店の裏や川向かう 
半月をふた日過ぎたる櫻かな 
水平に羽張る鳥や夕櫻 
ラケットのぱこんぱこーんや夕櫻 
俤の朝の櫻や夜半に覚め 
我を待つ花の散華に置きし我 

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