名    岡田一実 

雨空に返す水ごゑ夏柳 

萍の根やみづげぢが揺らし食ひ 

夏落葉いま用水の堰を急く 

きのふ病みけふ汐風の花柘榴 

鴉鳴きのちのしづかを古代蓮 

山梔子や雨あたらしく水面打ち 

山ちかく煙たち巻き牛蛙 

蜘蛛の巣を透き葉の蟻をじつと見し 

一日の半分過ぎて夏至の雨 

夏まつり見し物何かえーつと亀 

どかと坐しよよと冷酒賜ふかな 

他の人とエレベーターや蚊の痒み 

深ぶかと猿の高鳴く茂りかな 

萬緑や雲を斑に城の空 

滴るや否や茂りの奥深く 

かへりみて東あかるし夏落葉 

手を高く伸べ楊梅の赤き粒 

花吹かれ垂れては定家葛かな 

きりぎしを這ひはふ蛇や青く澄み 

何とかといふ名の黄なる夏の花 

山路きて茂りのうへを水平線 

西念を寝かしつけたる団扇かな 

蓮の花おろかな返事短かめに 

はつはつと田を打つ雨や合歓の花 

竹葉落ち俄に昼の熟れ匂ひ 

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