今生 岡田一実


 今生 岡田一実 

白梅の世の霾(よな)ぼこり眩しがる 

晴ばれと渦もかなひぬ観潮船 

ほほゑめり鼻に椿の花粉つけ 

亀鳴いてをんをゑんゑとは鳴かず 

墓うらら他家の供花の新しき 

遠旅やひと日の雨を春の海 

夕さりの影のてれんと幣辛夷 

につこりと花と撮られて手を叩く 

昔だに花の里とふいまが春 

人類を糸と思へば椿餅 

鳴きやんで白き夕べや西行忌 

今生は鈴を怖れず霾夕焼 


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