人ごゑ 岡田一実

 

人ごゑ    岡田一実

とこしへを音なす水泡楤の花 

眼差して驚き秋の麒麟草 

風の通へるもも色の月の蝕 

川音の雨気を含みて男郎花 

秋蝶のゆらゆら寄つてものの糞 

いつも澄みけふことさらに水澄んで 

蜻蛉追ふ蜻蛉が逸れて空高く 

死なば墓生きなば畦の曼珠沙華 

虫の音のふと側溝の濡れてゐて 

ゑみ終へし顔に当たりて稲の風 

しらしらと天の垂れたり伶人草 

人ごゑの絶えて山道七竈


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