闇処 岡田一実


 闇処    岡田一実 

狭(せ)に白き町立ち上がり鷹渡る 

天を鷹渡る一切羽ばたかず 

はからずも一粒そして零余子狩 

傾国に立ちしのしのと秋の雨 

雨脚のふと衰へて梨を買ふ 

入店をためらふほどの牛膝 

ゆつくりと食うていよいよ月見膳 

冷えながら消え遮断器の華やがず 

夕さりの近づきぎよつと杜鵑草 

世の冷えて森の闇処のいや猛り 

水音の闇の闌けては澄みまさり 

星のこゑとはみづ澄んでとめどなし


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